浜松での勉強会、22団体が課題を共有
静岡放送(SBS)によると、2026年9月に静岡県浜松市で駅周辺の企業や市担当者ら22の団体が参加し、大規模災害時に発生する帰宅困難者への対応をテーマとした勉強会が開かれた。参加者は、交通網の遮断や浸水などの被害を想定した受け入れ先確保や物資の備蓄、現場での誘導方法に関する課題を共有したとされる。
先行する仙台市との違い
勉強会では、東日本大震災後に帰宅困難者対策を進めた仙台市の事例が参照された。仙台市は2013年に官民協議組織を設立し、市が備蓄を備えた24か所の施設と協定を結び、1万1400人の受け入れ体制を構築したうえで、毎年誘導訓練を行っている。これに対し浜松市は、大学と協定を結んで最大で2600人の受け入れ枠を確保しているものの、具体的な誘導手順や連携訓練は十分に実施できていないという。
行政主導の有無が差を生む
浜松市危機管理課の小林正人課長は、仙台市との差について「市が交通局を持ち、地下鉄や市バスを管理している点で市が主導しやすい環境にある」と述べている(静岡放送による報告)。参加企業側からは、顔を合わせて横の連携を進めることの重要性が指摘される一方、「これをどうまとめて一つのアクションにするかには障害がある」との意見も出たと報じられている。
民間施設の受け入れ能力と限界
民間ホテルなどの受け入れについても課題が明らかになった。浜松市内のビジネスホテル「北の庭 THE KURETAKESO」の高橋一実支配人は、全250室の宿泊客向け備蓄はあるが、帰宅困難者の受け入れとなると限度があり、ラウンジの開放で30〜40人程度が対応可能だと説明した(静岡放送)。また、宿泊施設側は「受け入れ人数の目標値を行政から示してほしい」との要望を表明している。
関係者の声と現場の実感
「一つの会社ではできないことが、顔を合わせることで横の連携ができ、できることもある」―遠州鉄道 矢田央生総務部長(静岡放送)
民間と行政、自治体間の調整が不可欠だが、現場の施設ごとに能力や備蓄の状況が異なるため、全国で先行例とされる体制と同等の仕組みを単純に移植するのは容易ではない。呉竹荘ホールディングスの山下貴史副社長は、関係者が参加しているにもかかわらず「これをどうまとめて一つのアクションをとるかは、いろんな障害がある」と述べたと伝えられている(静岡放送)。
- 参加団体数:22団体(浜松市での勉強会)
- 浜松市の人口規模:約77万人(報道による)
- 仙台市の受け入れ体制:24か所で1万1400人受け入れ可能(2013年以降の整備)
- 浜松市の協定枠:大学との協定で最大2600人確保
| 項目 | 仙台市 | 浜松市 |
|---|---|---|
| 受け入れ施設数 | 24か所 | 大学等(協定)等、具体数不明 |
| 受け入れ可能人数 | 1万1400人 | 最大2600人(協定分) |
| 主導体制 | 市主導の官民協議組織 | 官民連携だが行政主導の徹底に課題 |
今後の課題と焦点
今回の勉強会で明確になったのは、受け入れ可能人数の数値化、民間施設と行政の役割分担、現場での誘導訓練の実施といった具体的な運用面の整備が急務であることだ。ホテルや商業施設、交通事業者がそれぞれ持つ資源をどのように県内で横断的に活用するか、また市町がどの程度まで主導して調整を行うかが今後の焦点となる。
静岡県内は地形や沿岸線の長さ、内陸部の山間地域の分散など地域性が多様であり、各地域の実情に即した受け入れ計画の策定が求められる。今回の浜松での議論は、県内各地での対策検討のモデルともなり得るが、実効性の高い体制構築に向けた具体的な数値目標の提示と、定期的な訓練の実施が不可欠だ。
(取材・文=奈々 松井、中部地方特派員)