研究の要点と発表
魚類としては珍しく片目ずつ目を閉じる「ウインク」を行うフグについて、山口県下関市立しものせき水族館「海響館」の魚類展示課スタッフ、荻本啓介さん(38)ら研究チームがメカニズムを解明し、ウインクが身につくまでの進化過程を推定した論文を発表した。研究成果は国際学術雑誌Journal of Morphologyに掲載されたと、共同通信の報道(毎日新聞配信)によると伝えられている。
何がわかったか
研究チームはまず、フグが目を閉じる際に用いている筋肉を特定した。2021年の解析で、フグは目の周囲の輪状筋を使い、目の中心に向かって皮膚を絞るように動かすことで片目ずつ閉じる独特のウインク動作を行うことを突き止めていた。
今回、新たに行った比較解析では、51種類のフグの筋肉構造を調査し、ウインク動作と体を膨らませる行動(膨張・収縮)に関係する筋肉群との関連性を示す証拠を得た。これにより、ウインクは既存の筋肉が別の機能に転用される形で進化した可能性が高いと研究チームは推定している。
研究チームの見立てと意義
荻本さんらは、ウインクの起源について「他の脊椎動物とは異なる進化起源を持つが、目を保護するという目的は共通している」と説明する。研究チームはさらに、フグ目の中でも種類ごとに異なる目の閉じ方について調査を続ける方針だという。
「既存の筋肉が目を保護するという新たな役割に転用されたと考えられる」と研究チームは指摘している。
下関にとっての意味
下関は古くからフグの一大消費地・研究拠点として知られ、海響館は地域の生物多様性研究や教育普及の中枢を担っている。今回の成果は、学術的な価値のみならず、地域の観光・教育資源としての価値も高める可能性がある。海響館が担う展示と連動させることで、来館者にフグの生態や進化の面白さを伝える素材として活用できるだろう。
- 研究機関:下関市立しものせき水族館「海響館」
- 主要発見:フグは目の周囲の輪状筋を使い、皮膚を中心に絞ることで片目ずつ閉じる
- 比較対象:51種類のフグの筋肉を解析
- 掲載誌:Journal of Morphology(国際学術誌)
今後の課題と期待
研究はウインクの筋肉メカニズムと起源に関する理解を前進させたが、いくつかの課題も残る。例えば、フグ目内での種ごとの閉眼行動の多様性がどのように生まれたか、遺伝的な基盤や発生過程の詳細などはさらなる研究を要する。また、実際の行動生態の中でウインクが持つ機能(捕食や外敵回避、仲間とのコミュニケーションなど)の直接的な証拠も今後の検証課題である。
地域にとっては、学術成果を活かした展示や教育プログラムの充実が期待される。海響館の展示が、研究成果と連動して市民や観光客に科学的理解を提供する場となれば、下関の「フグ文化」を学術面から支える新たな柱となるであろう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究主体 | 下関市立しものせき水族館「海響館」魚類展示課(荻本啓介さんら) |
| 主な手法 | 筋肉構造の解析、51種の比較研究 |
| 発表先 | Journal of Morphology |
下関の海とともに生きるフグの姿は、観光資源であるだけでなく科学的関心を呼び起こす対象でもある。今回の研究が地域の自然観察や教育に広く波及し、海響館と地域社会との連携が一層深まることを期待したい。